移動運用に行く

移動運用に行く

何となく6mの様子を把握し、電波には飛ばし方があるということがわかったら移動運用に出かけましょう。 頭の中で電波を飛ばしても交信はできません。 この後は、実際の経験で知識を増やし、楽しめばいいのです。 移動運用の用意をしましょう。

6mに限ることではありませんが、最初は最低限の機材で始め、徐々に設備を増強していきましょう。 最初からそれなりの設備を揃えてしまった局は、長続きしないという話を聞いたことがあります。 どんなに恵まれた無線設備でも、知識と経験が伴わないと猫に小判です。 最低限の設備はそれなりの結果しか得られませんが、その中でしっかり電波を飛ばし、交信する努力をすることは大きな経験となります。

リグはありますか

移動運用をはじめて、しばらくは無理なく軽装備で始めることをお勧めします。 初めは耳が鍛えられていませんので、いきなり50Wで運用し、遠くの局から呼ばれても、まごついてしまうと思います。 出力は10W以下に抑え、その中で確実に交信ができる練習が必要です。

昔はポータブル機というモノバンドで使いやすいリグが発売されていました。 その中でFT-690mkⅡ(FT-690)は2.5W出力ながら、よくできたポータブル機です。 無駄がない、消費電流が少ないという移動運用向けの仕様で、現在でも私は徒歩で行く移動運用で使用しています。 最近の移動運用向けのリグとしては、FT-818NDやIC-705になるのでしょうか。 新しく購入されるときは、携帯性と消費電流の低いリグを選んでください。

もし新たにリグを購入する場合、どこで買いますか。 近年はネットショッピングで手軽に買えますが、専門店からの購入をお勧めします。 理由は、メーカーからの情報や顧客の意見が専門店に集まるからです。 専門店は、ネットショッピングと比べて販売価格が高いと思われがちですが、実はそれほど変わりません。

アンテナの準備

アンテナは、電波の飛び方でも述べましたが、最初はダイポールをお勧めします。 ホームセンターで被覆線を買ってきて、バランにつなぎ、移動運用の前に調整しておきましょう。

半田ごてがない・・・アマチュア無線を楽しむうえで、半田ごては必要です。 安いやつで十分ですので、1本は必ず持っていることをお勧めします。

バランがよくわからない・・・インターネットでキットが販売されています。最初はキットを活用しましょう。 どうしてもバランを作りたくない場合は、市販品を購入しましょう。

アンテナを作ると、どうしてもSWRが下がらないことがあります。 SWRは1.5程度なら、気にせず使っても平気です。 原因の究明は後日必ず行うとして、今は移動運用に行くことを考えましょう。 同軸は適当な長さの3D-2Vか5D-2Vで、必ずリグとアンテナに合ったコネクターをつけてください。

ポールはどうするか

ワイヤーのダイポールならば、運用地にある木などに両端をひっかけて運用してしまうこともできます。 一応これでもOKですが、打ち上げ角を考えるとそれなりの高さに上げたいところです。 釣り竿のような伸縮するタイプのポールが販売されており、こちらを使うと便利です。

釣り竿を使ってしまうというのも、一つの方法です。 さすがに一番細い一段目は使えませんが、二段目あたりから移動運用に耐えられる強度があります。 軽量でもありますので、特に山の中での運用には便利です。

平地での移動運用は、6mの1波長である6m以上にアンテナを上げたいところですが、 山での運用は地形が地上高を補ってくれますので、4m位の高さを目指してポールを検討してください。

電源はどうしましょう

FT-690mkⅡのような消費電流の少ないリグならば、電池で交信を楽しむことができます。 私は1.2Vの充電式ニッケル水素電池の単三を、12個直列につないで使っています。 電圧は14.4Vになりますが、リグは13.8V±数%の範囲で動作しますので、問題なく使えます。

リグの消費電流にもよりますが、小型のシールドバッテリーも使えます。 こちらは12Vですので、定格の出力が得られないリグもあります。 まぁ、細かいことは考えず、これと思った電源を用意して移動運用に行ってみましょう。

インターネットと地図で場所を探す

移動運用では、運用地の選択が重要なカギとなります。 出かける前にインターネットや地図をよく見て、運用する場所を探します。 移動運用のアドバイスをしてくれるローカル局がいれば、より詳しい情報が得られるでしょう。 絶対に守るルールとして、一般の方に迷惑のかからない場所を選んでください。

移動運用は自動車で出かけるだけではありません。 公共の交通機関を使う方法や自転車でも出かけることができます。 その場合、持ち物を軽量化する工夫をしてください。

はじめての6mの移動運用では、以下の条件で運用地を決めてみるのはどうでしょう。
 ・できる限り標高の高い見晴らしの良い場所
 ・近くに大きな町がある場所
インターネットで「展望台」などのキーワードを入れて検索や、地図には眺望の良い場所にマークがついていますので、これを参考にすることもできます。 インターネットで検索し、有名な運用地である場合は先行者がいる場合もありますので、いくつか候補があれば安心です。

Eスポシーズンで、1000キロ前後離れた場所に大都市があるようなエリアでしたら、人口の少ない市郡で運用してみましょう。 その様な場所を選んで運用すると、Eスポが出現すればたくさん交信することができます。

持ち物を確認する

アンテナ、リグ、電源、筆記用具と時計があれば、移動運用はスタートできます。 もちろんアンテナにはマストやマストを固定するステー、同軸ケーブルが含まれます。 リグにはマイクや電源ケーブルが含まれます。 忘れ物があると運用地で泣くこととなりますので注意しましょう。

持ち物はリストを作って、確認しながら準備すると間違えがないです。 ずぼらな私は、プラスチックコンテナーの中に機材を収納し、そのまま移動運用に持っていっています。 これで忘れ物がなくなりました。

移動運用AtoZというページを公開しています。 これは移動運用の持ち物を面白おかしく書いたもので、足りない機材もあります。 注意してご覧ください。

人を意識する

アマチュア無線のアンテナは、一般的に目立ち、あやしく思われるようです。 特に6mは、エレメント長が1.5mありますので、そこそこ目立ちます。 その様な理由もあり、特に観光地や一般の方が利用する設備の利用は注意が必要です。

移動運用で職務質問を受けたことを武勇伝として話す方もいますが、これは自慢にはなりません。 そもそも怪しいから質問を受けるのであって、怪しまれる行動をしている我々はナニモノとなります。

移動運用でベストな場所は、人に会わない場所です。 このような場所は、特に大都市圏では非常に少ないのです。 もし観光客や地元の方に「何しているのですか」と聞かれたら、親切な対応が必要です。 移動運用はアマチュア無線の広報的な一面があります。 移動運用を行うときは、このことを意識して欲しいと思います。

アンテナを上げる

移動地に着いたら、アンテナを上げる場所を探します。 電波の飛び方でも述べましたが、打ち上げ角を意識した場所を選んであげてください。 移動運用では、アンテナは仮設ですので倒れなければ大丈夫です。 ポールが倒れないようステーを張ったり、ポールを何かにゴムバンドで固定します。

アンテナを上げたらバンド内を確認し、どんな局の交信が聞こえるかチェックしましょう。 そのうちの1局をコールし、シグナルレポートでアンテナからしっかり電波が飛んでいるか確認することができます。 6mにはビーコンが決まった周波数で24時間信号を送り続けています。 ビーコンでアンテナの状態やコンディションを確認することもできます。

運用する

50.15MHzあたりから50.30MHzあたりまでダイアルを回して、どんな局が聞こえているかチェックします。 もし交信してみたい局がいたら、コールしてみましょう。

基本的な交信は、以下の様になります。
 A: CQ CQ CQ こちらは、Seven、Lima、Three、Golf、Quebec、Hotel。
    東京都三鷹市、どうぞ。
 B: Juliet、Kilo、One、Sierra、Papa、Quebec、ポータブルOne。
 A: Juliet、Kilo、One、Sierra、Papa、Quebec、ポータブルOne、こんにちは。
    59で東京都三鷹市です。どうぞ。
 B: 了解しました。こんにちは。59で栃木県足利市です。どうぞ。
 A: 了解。カードはビューローに送ります。またお願いします。さようなら。
 B: さようなら。

何ともあっけないというか、愛想の悪い交信に感じますが、実はこんな交信が6mの移動運用では効率的です。 6mはコンディションがめまぐるしく変わる性格があり、ショートQSOを身に付けておくといいと思います。 一瞬のオープンの可能性もありますので、ゆっくり「私の名前は・・・」なんて自己紹介している場合じゃありません。

もちろんコンディションがよくないときなどは、ゆっくり情報交換するのもアマチュア無線の楽しみです。 CQを出している局にあわせて、相手がショートQSOを望んでいるのか、ゆっくり話したいのか判断してコールすると円滑な交信ができます。

QSLカードを出す

移動運用から自宅したら、QSLカードを出す用意をしましょう。 6mはQSLカードの交換を強要するような方はいませんが、QSLカードの交換はほぼ常習化しています。 QSLカードを送るにはJARLの会員になり、ビューローを利用することが一般的です。 もしJARLに入会していない場合は、すぐに入会してビューローが利用できるようにしましょう。 ご存知とは思いますが、ビューローは一般的な郵便における郵便局に相当します。 発送したいQSLカードをビューローに送れば、2ヶ月に一度JARL会員である相手局へQSLカードを送ってくれます。

QSLカードには相手局の設備も紹介されていることがほとんどです。 運用後、QSLカードをもらって相手局の設備を見れば、電波の飛び方も想像できます。

移動運用を振り返る

お勧めしたいことですが、移動運用の振り返り、日誌を書いておくと後日役立ちます。 もちろんログにメモっておくのでも構いません。 電波の飛びの良し悪しやアンテナを上げた場所、ビート(妨害)をかけられたなど、思いつくことを書いておいてください。 その情報により、運用した場所が移動地としていい場所であるかわかるようになります。

さらっと簡単に、移動運用に行く前の準備から帰宅後までのことを書きました。 アマチュア無線は経験と、経験に合せた設備で楽しめます。 まずは手軽にはじめてみて、楽しんでみてください

最後にクギをさしますが、お手軽運用は入門時だけです。 お手軽は結果もお手軽ですので、長く楽しめるものではありません。 早くお手軽を脱却して、6mの移動運用を楽しめるようになってください。