移動運用のアンテナ

移動運用のアンテナ

アンテナは、『高く、大きく』が基本です。 最近はコンパクトでスタイリッシュなアンテナがたくさん市販されていますが、どうしてもフルサイズのアンテナには敵わないと思います。 見かけのSWRにだまされて、極端に言えばダミーロードのようなアンテナも多いのではないでしょうか。 ぜひ、見た目のスタイリッシュさに惑わされることなく、フルサイズのアンテナをできる範囲の高さに上げてください。 自宅で上げられないアンテナを上げることができるのも、移動運用です。

50MHzのアンテナは、フルサイズのダイポールで3mぐらい。 短縮する必要がないサイズではないでしょうか。 エレメント数に比例して、重量が増してきます。 移動運用では、自分の取り扱いできる範囲でアンテナを選ぶといいと思います。

最初から八木アンテナで運用することはお勧めしません。 アンテナ選びは最初はダイポール。物足りなくなったら、エレメント数を増やしていくといいと思います。 ダイポールのようなシンプルなアンテナで、「こんなアンテナで交信できた」という経験は、アマチュア無線を楽しむうえで大切なことだと思います。 まず電波を飛ばす基準を身に付けて欲しいと思います。

アンテナ選びは悩む

アンテナ選びは悩むものです。 50MHzをはじめて間もない頃、悩む私にローカル局が言いました。
「頭の中で電波を飛ばしても交信できないよ」
まさにその通りです。 悩むより実行してみたほうが早いものです。

アンテナはダイポールから

はじめてのアンテナは、ワイヤーで作ったダイポールをお勧めします。 ダイポールは構造が簡単で、アンテナの基本となるものです。

「えっ、ダイポール。電波の飛びは悪いでしょ」

確かに50MHzの世界では、ダイポールは非力です。 でも馬鹿にしないで教科書通りに作ってみてください。

大都市圏ならば、ダイポールを使って標高のある山の上で運用してみましょう。 意外と交信でき、交信の楽しさを味わうことができます。 人口が少ない地域ならば、Eスポ時期にダイポールを使った運用がお勧めです。 Eスポがでれば意外に遠くの局と交信でき、大都市圏の局からパイルを浴びることがあるかも知れません。

「意外」を感じることで楽しさが増し、次の工夫につながります。 これがアマチュア無線のおもしろさではないでしょうか。 ダイポールに不足を感じたら、利得の高いアンテナを検討しましょう。 アンテナの自作は、もっと楽しみが広がります。

使ってみた移動運用のアンテナ

昔話となりますが、FT-690mkⅡを販売店で買った日、近所の標高300mの関東平野が見下ろせる場所に行きました。 そこでリグを箱から出し、付属のロッドアンテナをつけて運用しました。 聞こえているCQに応答し、数局と交信ができました。 しかしCQを出しても、誰からも応答がありません。 垂直偏波であったことと、2.5Wという小出力を考えると当然のことなのですが、少しくやしい。 CQを出して呼ばれたくてホームセンターに向かい、アンテナ作りの資材を買いました。 その夜、買ったケーブルやアルミパイプでヘンテナを作りました。

翌日、昨日運用した場所にヘンテナを上げ、FT-690mkⅡ+FL-6020(10W)で運用しました。 バンド内をワッチすると、南鳥島の局が入感。コールすると、簡単に交信することができました。 その後、CQを出すと1エリアに交じって6エリアからも呼ばれます。 この体験が私にとっての「意外」であり、その後50MHzの深みにはまるきっかけとなりました。

ヘンテナの運用結果に満足はできましたが、自作のアンテナに自信が持てず、どうしてもメーカー製のアンテナが欲しくなりました。 そこで2el.HB9CVを買ってみました。 ヘンテナとあまり変化は感じませんでしたが、メーカー製という安心がありました。 アンテナが軽量ということもあり、標高の高い場所に登ってはCQを出して交信を楽しみました。 その勢いで6m&Downコンテストに参加し、コンテスターのひしめく中で2el.HB9CVの限界を感じてしまいました。

その後、4el.HB9CVを買いました。 標高の高い運用地では交信できるエリアも広がり、栃木県内からグランドウェーブで3エリアとも条件が良ければ交信できました。 ただし、平地での運用ではアンテナの高さが低く、打ち上げ角が高くなることから思うように交信エリアは広がりません。

そこで購入したのが、タイヤベースと9mのポールです。 合わせて6el.HB9CVを購入しました。 重装備になり、さすがに山の上には持っていけない重さとなりましたが、高く上げたアンテナからでる電波の打ち上げ角が低く、標高のない移動地でも交信範囲が広がりました。 ちなみにEスポがでたときは、エレメント数が多ければいいという訳ではありません。 打ち上げ角の関係で、不利になることもありました。 この頃から、JARL主催のコンテストで50MHzシングルの部門で入賞できるようになりました。

最近は、5el.F9FTを使っています。 軽くて組み立ても簡単で、性能も満足できるバランスが良いアンテナです。 山の上で運用するときは、自作のダイポールを使っています。 このようなアンテナを使って楽しんでいます。

5el. F9FT

自動車を使って出かける移動運用では、TONNA製F9FTを使っています。 現在は販売中止となっており、残念なアンテナです。 優秀なアンテナなので、今後は自作を考えています。

4el.では非力、6el.は重いということから購入しました。 またアクティブな移動運用をを楽しむ6mマンが、皆使っているということも選定の理由です。 性能的に満足していて、このアンテナを使って聞こえないものは『あきらめがつく』という感じです。 そのまま使うことはせず、工具なしで組み立てられるようにしています。 慣れれば5分程度で、アンテナを上げることができます。

このアンテナは固定局で使用することを想定しているため、強度を持たせる支持ブームがついています。 移動運用は短時間の使用であるため、このブームはいりません。 不要なブーム等を外して、重量は3kg弱になりました。 工夫をすれば、もっと軽量化できると思います。

エレメントはよく使用する50.2MHzに合わせて、ホームセンターで売っているパイプカッターを使って10mmカットしました。 (エレメントは左右10本ありますので、それぞれカットします。) ナットの部分は全て蝶ナットに変え、ショートバーはアルミ平板とメガネクリップで作り、エレメントに挟めるようにしています。 収納はエレメントとブームはスキーケースに入れています。 その他の部品は工具箱に入れて、運用地に持ち込みます。

TONNA製F9FTの販売がなくなり、「おすすめのアンテナはどれ」という質問をいただくことがあります。 ご自分が取り扱える重さで、利得や値段を考えて買うのがいいと思います。 経験からとなりますが、F9FTの代わりにもし購入するとしたらRadix製の6el.YAGIなどが選択肢です。 Radix社の製品は、自宅のベランダアンテナをはじめ、移動運用で28MHzの3el.YAGIを持っています。 いずれも組み立てが簡単で、同社の製品は移動運用を意識した製品であると思います。

2el. HB9CV / 4el. HB9CV

少し歩く移動運用では、2elまたは4elのHB9CVを使っています。

自動車で行ける運用地では、特定方向に山が迫っていたり、100%満足できる場所は限られています。 駐車している場所の近くに、少し山を登れば360°開けているという場所は結構あります。 その様な場所は、国土地理院のサイトで地形図を見るとよくわかります。 10分程度の山登りでしたら、多少の重いアンテナでも我慢して持って登れます。 私は歩く時間に応じて、2elまたは4elのHB9CVを使い分けます。

このアンテナは固定局で使用することも考えて、エレメントはビスで止める様になっています。 移動運用は短時間の使用であるためビスなど使わず、ビニールテープでとめます。 エレメントの差し込む長さを考えずにセットできるよう、タコ糸をストッパーとして巻いておきます。 タコ糸がずれないよう、最後に瞬間接着剤で止めておきます。

ダイポール

それなりの登る時間があり、標高がある場所で運用する場合は、アルミパイプで自作したダイポールを使っています。

ダイポールならば、ワイヤーを逆Vにして使用したほうが軽量化できますが、アンテナの方向を変えるときには、このようなダイポールのほうが使いやすいです。 1.5m位のアルミパイプを2本もっていけばいいのですが、山に登るというもう一つの課題もあるため、収納重視の仕様としました。 バランは市販のキットを使っています。これで50Wまで使えます。

エレメントは、パイプをつないで1本にします。 パイプにはタコ糸が通してあり、両端にケーブルストッパーがあります。 つなげた後、両端のケーブルを引いた状態でケーブルストッパーで固定します。

まとめ

エレメント数に比例して大きさ、重さは増えてきます。 でも、移動運用では50Wを出すだけでは遠くまで電波は飛びません。 遠くまで飛ばすには、出力よりもアンテナが重要になってきます。

垂直系はSSBやCWではおすすめしません。 水平系のアンテナを使いましょう。

出力ばかり気にする方も多いですが、送受信で重要なのはアンテナです。 移動運用で楽しめない場合は、ぜひアンテナを見直してください。 出力アップは二の次です。

とはいえ各局様々な考えがありますので、まずはやってみることがベストです。 バランスの良い運用システムをそろえることは、移動運用を楽しくする基本となります。 アンテナに限れば、基準はダイポールですので、一度はダイポールでの運用を経験してください。