移動運用の電源

移動運用の電源

移動運用で、重い機材の一つに電源があります。 当たり前のことですが、リグは電源に接続して動作するもので、受信するだけでも電力を消費します。 リグの消費電流を確認してください。 消費電流が少ないリグは、移動運用向きです。 出力に比例して使う電流量は増え、50W出力で運用しようとそれなり電流が必要になり、容量が大きな電源が必要になります。

手軽な電源として、自動車に搭載されている12Vのバッテリーや電池があります。 長時間運用したい場合は、発電機も一つの選択肢です。 ただし発電機を使う場合、安定化電源やACコード、燃料などが必要になります。

自動車で運用場所に向かう場合は、積めるだけの機材が運べますが、徒歩で山の上に担ぎ上げる場合は、1gでも軽くしたいものです。 リグの消費電流と運用する時間を考え、過不足のない量の電源を選ぶことが、移動運用でのコツです。

移動運用の電源選び

移動運用で手軽な電源といえば、12Vバッテリーです。 ホームセンターなどで自動車用の安価なバッテリーが売っており、これを使うことができます。 バッテリーは、様々な容量があります。容量が大きくなると重くなります。 山の上に持ち上げて運用する場合はもちろんのこと、自動車で運用地に行く場合も、自宅から車内に積むときに軽いほうが楽です。

移動運用では、倒しても液漏れしないシールドバッテリーをお勧めします。 「私は絶対にバッテリーを倒さない」と思っていても、何かの拍子でバッテリーは倒れます。 バッテリーの中に入っている液は希硫酸ですので、安全な物質ではありません。 安全を重視する意味でも、液漏れしないシールドバッテリーを選びましょう。

長時間の運用の場合は、発電機を選びぶといいと思います。 燃料がなくなるまで発電し、運用を続けることができます。 発電機を使う場合は、安定化電源やACコード、予備の燃料が必要になりますので荷物が増えます。 発電機も安くはありませんので、運用スタイルが発電機を使う必要があるか考えて購入されるといいと思います。

以下は私の感覚で、リグの出力と運用時間による電源の選択を表わしてみました。 大中小はバッテリーのサイズです。 大は100Ah、中は50Ah、小は10Ahぐらいの容量を想定しています。 使用の条件によってばらつきがありますので、この表はあくまでも参考としてください。

出力/時間2H6H12H18H24H
2.5W
5W
20W発電機発電機
50W発電機発電機発電機

バッテリーのサイズ

DC電源で動作するリグの定格電圧は13.8Vですが、12Vでも動作します。 ただし、13.8Vで運用する場合よりも出力は下がるようです。 手持ちのリグで電圧を変えて、出力を測定してみました。 使い込んだTS-60Sは、少々くたびれています。 簡易的な測定をした数値で、かつリグの状態が一定ではありませんので、この結果は参考程度としてください。

リグ/電圧12V13V14V
TS-60S30W40W50W
IC-7300M45W50W50W

バッテリーは使用し続けると電圧が下がり、ある一定の電圧以下になるとリグが切れてしまいます。 その前にマイクで声を出したとき、CWで送信した時に電圧の変動により、おかしな音になります。 移動運用で呼ばれなくなったと思ったときに、電源が消耗して電圧が下がっていたなどということもあります。 新しいリグには、供給している電圧値を表示できる機種がありますので、運用中の電圧の変化も確認しましょう。

容量は『7Ah』のように書かれており、評価環境で20時間使用した電流の量を表します。 7Ahの容量のバッテリーならば、0.35Aの電流消費ならば20時間使用できる(0.35A * 20H = 7Ah)という意味です。

ただし、どのような環境でも0.35Aの消費ならば20時間電流が流れ続けるかといえばそうではなく、バッテリーの置かれた温度でも変化します。 冬はバッテリーの持ちが悪いです。 このようなことも、移動運用で経験することができます。

実際に使う容量

以下の電流を必要とするリグがあったとします。
  ・受信時 0.1A
  ・送信時 0.9A
このリグを使って、送信と受信を1:1の割合で繰り返し、平均で0.5Aの電流の使用したと仮定します。 7Ahのバッテリーを電源として使い運用すると、
  7Ah / 0.5A = 14H
となります。

「えっ!14時間!そんなに持つのか・・・」。ちょっと信じられません。

手持ちのリグで確認しようと考え、FT-690mk2で実験をしてみました。電流消費量を見ると
  ・受信時(FM) 0.08A
  ・送信時(ピーク時) 0.9A
ですから、仮の計算で求めたものに近いと思います。 充電完了後、2時間ほど移動運用でCQを出しまくりました。 運用前と運用後の電圧の変化はほとんどありません。 まだまだ十分に使えそうです。 本当に14時間以上電源が持つかは定かではありませんが、2間の運用ならば7Ahのバッテリーは無駄に重い電源を持っていったことが分かりました。

50W機ではどうなる

電流をよく食うTS-60Sならばどうなるでしょうか。電流消費量をみると
  ・受信時 1.45A
  ・送信時 16A
です。送信と受信を1:1の割合で繰り返したとすると、平均で8.725Aの電流の使用と仮定します。 計算がしやすいよう平均9Aの電流を使うこととします。

さすがに7Ahの小型バッテリーでは無理があるとわかりますので、自動車用の36Ahのバッテリーで計算してみます。
  36Ah / 9A = 4H
「えっ!4時間も持つの?」
実際運用してみるとすぐに電圧が低下してしまい、交信中に「音が変ですよ」と言われてしまいます。 20時間かけて36A使えるという仕様のところ、平均9Aを急激に使用すると無理もないことだと思います。

若いころ、一度だけ山の上に36Ahのバッテリーを4個持ち上げて、コンテストに50Wで参加したことがあります。 体力任せの移動運用でした。 途中仮眠をとったので、大体12~13時間程度の運用だと記憶していますが、問題なく運用できました。 計算してみると、
  (36Ah * 4) / 9A = 16H
なんとなく納得する数値となりました。

50W機は余裕をもって

電流の消費が激しい50W機を移動運用で使う場合、電源消耗を心配しなくても済むように発電機を利用するといいと思います。 以前、300W程度の小型発電機を使っていたことがあります。 非力ですので、直接50Wで使う電流を得ようとすると負荷がかかって大きな音を立てて発電していました。 安定化電源とリグの間に30Ah前後のバッテリーをフローティング接続させたところ、発電機の負荷が抑えられ、発電時の音も小さくなりました。 計測したことはありませんが、フローティングさせることで燃料の減りも抑えられたように思えます。

バッテリーを使う場合は、大容量のバッテリーを選びます。 これが重いです。 移動地までは自動車が運んでくれますが、自宅から車内に運ぶまでが苦痛でした。 コスト的にも発電機よりは安いですが、重量は無視できないです。

ガソリン燃料の発電機は、比較的安く買えます。 しかし燃料のガソリンが問題です。 最近は、燃料タンクに給油ができないガソリンスタンドが増えました。 誤って車中でガソリンが漏れたときの匂いは、最悪です。気分が悪くなります。

ガソリンの購入の問題や匂いを解決してくれるのが、ガス燃料の発電機です。 ガソリンの発電機と比べて価格が高く、いつか欲しいと思いながら、私はガソリン燃料の発電機を買ってしまいました。

選び方ですが、実際に使っている方の意見を聞いて買うと間違えがないです。 インターネット上の情報を鵜呑みにせず、リアルな情報が間違えありません。 私は周りに発電機の相談ができる人がいなかったため、信頼できる6mマンが使っている発電機を買いました。 よくノイズを問題視する記事を見たことがありますが、実際に使用して6mでは気になりません。

まとめ

出力に比例して、電源設備の大きさと重さは増えてきます。 それでも移動運用では、50W出して遠くまで電波を飛ばしたいという気持ちは皆さん共通するものだと思います。 私もそう思います。

出力は電波を遠くまで飛ばす要素の一つですが、同時にアンテナも重要です。 アンテナも重量がある機材ですが、送受信の能力が上がることを考えると、電源より先にアンテナ設備の充実を図ったほうがいいと思います。

各局様々な考えがありますので、まずは検討してやってみることがベストです。 バランスの良い運用システムをそろえることは、移動運用を楽しくする基本となると思います。