電波の飛ぶ範囲

運用している場所から電波を出すと、どの辺りまで電波が飛ぶか想定できていますか。 より広範囲の局と効率よく交信するには、電波の飛ぶ範囲を理解する必要があります。 グランドウェーブであれば運用地の標高とアンテナの利得、出力からどの辺まで飛びそうか。 Eスポがでたら、電離層に反射してどの地域と交信できそうか想像しましょう。 移動運用に出かけて、ただCQ出せば楽しめるというものではないのです。
グランドウェーブの範囲
グランドウェーブは、6mにおける基本的な伝搬です。 グランドウェーブで交信できる範囲は、普通に考えて100km位ではないでしょうか。 標高が高い場所で運用すると、電波が到達する距離は伸びます。 標高が低い場所で運用すると、地表を這うように電波が飛んでいき、途中の障害物などが減衰の原因となり弱くなります。
波長が6mに近いFM放送を聞いてみましょう。 グランドウェーブで確実に交信できる範囲がだいたい分かります。 それ以上遠くの局と交信したい場合は、運用の条件を改善することで、交信の可能性が出てきます。 標高の高い運用地から運用することや利得のあるアンテナに変えることも条件の改善です。
山を越える電波
これは私の感覚ですが、条件を最大限に引き上げることにより、500~600km圏内をグランドウェーブでできる地域と考えています。 日本では500km幅の平野はありませんので、直接波や地表波に加えて山岳の反射や回折も利用します。 例えば私がよく移動運用を行う栃木県内では、北は青森、西は大阪・兵庫辺りが、グランドウェーブと考えています。
遠方から届く信号は、微弱です。 有利な運用場所を選び、出力は移動運用で許可される最大値の50W、アンテナも5エレ以上を選ぶと楽しめると思います。 ノイズの強弱も関係しますが、弱い信号を聞き分ける耳に訓練する必要があります。
これまであまり意識をされていなかった方は、自分の電波がどこまで飛ぶか意識してみてください。 弱い信号を見つけたときも、今交信しておくべきか判断ができると、交信する優先順位がわかります。 そして1kmでも遠くに電波を飛ばそうという意識は、通信技術のステップアップにつながります。
Eスポの範囲
6mのEスポは、HFと比べてオープンの頻度も少なく、交信できる時間も短くなります。 個人的な意見ですが、Eスポでよく交信できる範囲は700km位から遠くと考えています。 オープンも全域が交信できるという訳ではなく、雲のように徐々に移動している様子を感じます。 また正規反射のほか、ランダムに反射するスキャッターが起きる場合があります。
年に数回は、400~500kmの近距離Eスポが発生します。 時期的には、6月中旬~7月上旬辺りです。 1エリアと3エリアがオープンすると、運用局の多さからバンドがかなり騒がしくなります。 このチャンスに、グランドウェーブで厳しい地域を一気に交信してしまいましょう。 1エリアで言えば、3エリア西部、4と5エリアの東部、青森と北海道の南部が狙い目です。
Eスポは季節によって、入感する地域が変わります。 4月の後半くらいに遠方が入感します。1エリアですと沖縄です。 その後徐々に交信できる地域が近づき、その後遠方に移って8月の末でほぼ終わる感じです。 9月上旬でも1エリアから沖縄が聞こえることもありますが、Eスポ最盛期と比べるとかなり信号は弱くなります。
6mでは、普段できない地域のオープンを逃がさないのがコツです。 特にJCCやJCGのアワードに挑戦されている方は、大きなチャンスと言えます。 Eスポがでて興奮して運用するのではなく、冷静に状況を判断して交信するといいでしょう。
運用地特有の飛び方
6mの基本的な伝搬は、見通し距離のグランドウェーブによる通信です。 したがって少しでも標高がある場所の方が遠くまで電波は飛んでいきます。 容易に電波が遠方に飛んでいきますので、6mの移動運用を始めたばかりの方にはお勧めな運用地です。
それでは平地は飛びが悪いかと言えば、一概には言えません。 アンテナを打ち上げ角が低くなる高さまで上げられれば、グランドウェーブによる交信も十分に楽しめます。 Eスポが出ると標高の高い場所より平地の方が有利です。 Eスポシーズンはコンディションを予測しながら、運用地を決めることとなります。
運用する場所は、グランドウェーブによる通信を狙う場合は、電波を飛ばす方向が傾斜になっている地形を選びます。 なぜかというと、地上高を稼ぐことができ、打ち上げ角が低くなるからです。 山に登れば、そのような地形はたくさんありますので、運用ポイントは容易に探せられます。 平地の場合はそのような地形は少なくなりますが、土手を使うことで多少の打ち上げ角を下げることもできます。
ちょっとした配慮をすることで電波の飛び、特にグランドウェーブの伸びは変わってきます。 実際に運用してみて、その違いを経験すると、運用地の選び方も変わってきます。
交信は容易であるが難しいエリア
グランドウェーブで交信できる範囲は、ある程度交信が確約されていると考えていいかもしれません。 その反面、いつオープンするかわからないEスポやスキャッターのオープンは運の良し悪しとなります。
Eスポはオープンさえすれば簡単に交信ができる条件でありながら、交信しにくい地域が必ずあります。 例として島があります。 島は固定局が少ないうえに、容易に移動運用ができないという欠点があります。 そのため運用が少なく、運用があるとパイルアップになることが多いです。 聞こえたら必ず交信をしておくことをお勧めします。
F層のスキャッタはチャンス
特に太陽黒点数が増えた春と秋、F層のスキャッタで全国的にオープンすることがあります。 グランドウェーブでもEスポでも交信しにくい地域が、簡単に交信ができるのもF層のスキャッタです。
スキャッタは電波がそれほど強くありませんので、利得のあるアンテナが必要になります。 条件にもよりますが、ホイップアンテナやダイポールではスキャッタの出現に気づかない場合もあります。 そう頻繁に起きる現象ではありませんので、チャンスを有効に使いましょう。
弱い電波
無視してしまいそうな弱い信号を見つけたとします。 そのような場合は、じっくり聞いてみましょう。 難しい地域からの電波であることもありますので、交信のチャンスを逃さないようにしましょう。
コールサインの欠片(一部)から判断して、何が何でも交信してしまったほうがいいか、 弱いからあきらめたほうがいいか判断するのも電波の飛ぶ範囲がわかっていないとできません。 その弱い信号は、交信が難しく、逃したらしばらくは交信できない市や郡であったりする場合があります。 交信しやすい場所、しにくい場所を知ることは、特にJCCやJCGを目指す方には重要なことです。