季節に合わせた運用地

季節に合わせた運用地

運用地は、季節や時間に合わせて選択すると楽しめます。 また地域の気候に合わせた、安全を考慮した運用を心掛けるべきだと思います。 真冬の吹雪の中、移動運用を行ったことがありますが、振り返れば安全な運用とは言えませんでした。 安全第一で、移動運用を楽しましょう。

VHFでは基本的な伝搬はグランドウェーブですが、異常伝搬とされる電離層や対流圏の反射など、起こりやすい季節や時間があります。 異常な伝搬に適した運用地があります。 どのような場所にアンテナを上げるべきか、見えない電波を想像しながら運用地を選んでください。

春の移動運用

6mのグランドウェーブで交信できる範囲は、私はだいたい100km位と考えています。 北関東の平地では、南関東の局が交信できるという距離感です。 それ以上遠くの局と交信したい場合、よりストレスなく強力な電波で交信したい場合は条件を改善する必要があります。 条件とは、アンテナやパワーをさしますが、標高の高い運用地から運用するなど、運用地選びも含まれます。

日本は南北に長いため、西日本や太平洋側が春めいて移動運用が活発になっても、日本海側や北日本では雪が残り、気温の関係もあって移動運用がしやすいと思えません。 春の運用を選ぶ目安は、雪が関係するのではないかと考えます。 太平洋側であっても日本海側で雪が降り、季節風が強まる中での運用は、快適な運用ができません。

3月になると、1エリアでは6mをワッチする局が増えてきます。 無線人口が多い大都市は平野部にありますので、平野の縁にあたる低山で運用すると楽しめます。 運用する時間帯は、最近の傾向として午前中を中心に運用が盛んです。 ただしまだ冬の名残があり、冷たい季節風が吹き、乾燥するとノイズが高くなります。 低気圧が日本海にあり、3月としては湿潤な南風が吹く雨の日はノイズも少なくなります。 経験上のことですが、特に早春の暖かな雨の日は狙い目で、移動運用局が少ないことから運用するとたくさんQSOができます。

4月になるとグランドウェーブが伸びてきます。 対流圏伝搬を含むと思われる伝搬ですが、1エリアだと3エリアの信号がよく聞こえてくるのもこの時期です。 Eスポが発生するまでのわずかな期間ですが、標高の高い場所や狙う方向が開けた場所を選ぶといいと思います。

4月下旬あたりから、Eスポが発生し始めます。 Eスポが発生してない時間帯は、グランドウェーブも伸びて楽しめます。 この頃のEスポは長距離が多く、1エリアからは沖縄がよく聞こえます。

春の天気は変わりやすいですので、移動運用は注意してください。 冷たい雨に濡れると、体温が奪われます。 特に山に担ぎ上げた運用を行う場合は、雨の日は避けたほうが安全です。

Eスポシーズンの移動運用

4月下旬から始まるゴールデンウィーク前後から、Eスポがオープンし始めます。 高い山で運用していると、Eスポが発生するとCQを出しても呼ばれず、呼んでも平地の局に呼び負けするという経験をします。 これは打ち上げ角の関係で、標高の高さや見通しの良さが不利になることがあります。

Eスポシーズンは、山の上より平地での運用が楽しめます。 場合によっては、6m以上に上げたエレメントの八木アンテナより、モービルホイップのほうが有利になる場合もあります。 では、Eスポはモービルホイップでの運用がいいという訳ではなく、Eスポが発生する方向に打ち上げ角を高くして電波を飛ばす方が有利です。 平地で運用するときは、6m以上にアンテナを上げられるポールを使い、Eスポ時は面倒でも3~4mに高さを抑えて運用するなど、 工夫によって効率よく電波を飛ばすことができる可能性があります。

6月中旬から7月上旬は、近距離Eスポのオープン頻度が高まります。 無線人口の多いエリアを狙って、普段交信しにくい場所を選んで運用すると、とてつもないパイルアップを経験できます。 過去に栃木県矢板市で運用しているときに近距離Eスポが発生し、2エリア西部と3エリアからたくさん呼ばれ、 Eスポが消滅する夜まで帰ることができなくなった経験をしたことがあります。

4~6エリア、7、8エリアは近距離Eスポで交信できるエリアが、無線人口が多い1~3エリアに相当します。 普段運用局が少ない地域も、一気にバンド内が華やかになりますので、このチャンスを逃がさずにCQをだし、たくさん交信してください。 そのとき1エリアの移動局は、CQを出しても呼ばれなくなります。 やけくそになってCQを出しまくるのではなく、呼びに回ったほうがたくさん交信できます。

この時期はコンディションが変わりやすい時期ですので、各地のビーコンをリグのメモリーにセットし、時々確認をしながら運用するべきです。 特にバズ(ノイズ)が聞こえてくると、Eスポの前兆だと私は認識しています。 変化があった場合はCQを止め、状況の確認も必要かもしれません。

Eスポの層は、見たことはありませんが移動していることを感じることがあります。 栃木県南部で運用していると、栃木県北部の運用局から「6エリアが聞こえてきた」という情報が入ると、数分後に宮崎のビーコンが聞こえだすという 経験が何度もあります。もちろんその逆もあります。 インターネットの情報は一瞬のオープンを逃しますので、オープンを凝視しているのはお勧めできません。 やはり先輩方がうるさく指導してくれた『ワッチ』が大切なのだと思います。

夏の移動運用

8月になると、Eスポは徐々に遠距離になります。 1エリアからですと沖縄の局のCQがよく聞こえますが、この時期になると呼ぶ局も少なくなります。 Eスポの代わりに狙い目となるのは、真夏の夜間や早朝はグランドウェーブです。 対流圏伝搬を含むと思われる伝搬ですが、Eスポで交信するエリアの信号がふわふわと聞こえてきます。 流星群の時期を狙ったメテオ・スキャッターも楽しむことができます。

平地は気温が上昇る時期です。 最近は、地域によっては体温に迫ることも珍しくなくなり、場合によっては体温を越える気温になることもあります。 高温を避ける意味でも、早朝や夜間を狙った移動運用は快適です。 運用局も少なくバンド内が静かな上にグランドウェーブが伸び、思わぬ遠方との交信が楽しめます。

標高の高い場所も涼しく、夏の移動運用に適しています。 場所によりますが雷の発生も多い時期ですので、天気を相談しながらの運用してください。 移送運用では金属製品をもって運用しますので、雷に襲われるとかなり危険ですので、発雷を感じたら逃げるべきだと思います。

7エリアや9、0エリアなどの標高の高い地域からの大都市圏を狙った移動運用も楽しめます。 このエリアは秋が早く訪れますので、この時期に楽しんでおくといいと思います。

秋の移動運用

9月になるとEスポも出なくなり、グランドウェーブの季節となります。 にわかに6mを楽しむ局は、Eスポのオープンがなくなると他のバンドに移り、バンド内は静かになります。 秋はグランドウェーブを主体に、移動運用の計画を組み立てると楽しめます。

グランドウェーブ狙いで利得のあるアンテナを使うと、500~600km先の局と交信ができます。 運用する場所は平地でも標高のある所でも、打ち上げ角を低くできれば楽しめます。 アンテナを6m以上に上げ、エレメント数も多いほうが有利になります。 1~3エリアに隣接するエリアで移動運用を行い、しっかり電波を飛ばせば、パイルアップを経験することができると思います。

太陽活動のピーク時には、F2層のスキャッターで全国が開けることもあります。 このオープンは面白いほど、交信に苦労していた地域が安定して入感します。 気まぐれなオープンなので、チャンスを逃さないように情報の収集や経験上の予想をしながら運用地を選んでください

秋のコンディションは、個人的な意見として『6m程度の高さに、5エレ以上アンテナ』が欲しいと感じます。 ホイップアンテナでは楽しいコンディションに遭遇できません。 無理のないアンテナを、無理のない高さに上げる心掛けが、移動運用を楽しくします。

栃木県内で移動運用をしていると、お彼岸を過ぎると7エリアにアンテナを向けても呼ばれなくなります。 お彼岸が一つの移動運用における区切りとなるような気がします。 11月に入ると朝晩の冷え込みもつらくなります。そろそろ年内の移動運用も終わりに近づきます。

冬の移動運用

移動局が減り、近隣の100㎞圏内の交信がメインとなります。 雪が降るエリアは、降雪と共に移動運用は冬休みとなります。 移動運用は『飛ばす運用』から『楽しむ運用』に切り替えます。

雪が降らないエリアは、平野の縁に当たる低山で運用することで移動運用が楽しめます。 早朝は冷え込み、アンテナを上げる手は冷たくなります。 自動車の中や風の当たらぬ日当たりならば、快適に運用することができます。

JCCなどのアワードを追いかけていると、全く新しいポイントと交信ができない季節で、面白くないと感じる方も多いかと思います。 考え方を変えて、積極的に移動運用でCQを出し、純粋に交信を楽しむというシーズンオフの楽しみ方も準備しておくといいと思います。 無線通信は『情報交換の場』でもありますので、パイルにならなければ少し多めに話をし、相手局の楽しみ方を知ることも趣味の幅を広げるいい機会だと思います。 また普段運用する機会が少ないAMの運用や、CWの練習などにもいい季節ではないでしょうか。

個人的にぜひ実践していただきたと思うことは、自宅からの『冬のローカルQSO』です。 仲のいい局との交信ではなく、CQを出して近隣の多くの局と情報交換をお勧めしたいです。 各局にはそれぞれ経験があり、その経験を伺うことで、春からの移動運用の計画につながります。 経験豊かな先輩局との交信を面倒がる傾向にありますが、耳を傾け、いただける情報を吸収してしまいましょう。 ただし、長々とした武勇伝を聞かさえると辛いですので、適度な交信をあらゆるレベルの局に求めたい気持ちです。

まとめ

6mは季節によってコンディションが変わり、楽しめるバンドです。 ただし、運用するエリアによっては運用している局が少なく、楽しむことができないエリアもあります。 ご自分の運用するエリアの実状に合わせて、他のバンドと組み合わせて楽しむことも、長く6mを運用するコツだと思います。

私は幸い1エリアという局数が多いエリアで運用していますので、年中楽しむことができるバンドと勘違いしています。 アマチュア無線は交信を楽しむものです。 ぜひ実状に合わせて移動運用を楽しんでください。