CQの出し方
移動運用に出かける理由を聞かれると、「たくさん交信したいから」と私は答えます。 ロケーションのよい場所で運用し、自宅ではなかなかできないエリアと交信することも移動運用の楽しみです。 それ以上に、とにかくCQを出してたくさん呼ばれる楽しさが移動運用にあります。
では、とりあえず移動運用に出かけてCQを出せば楽しめるかというと、実はそうでもありません。 応答しやすいCQ、応答したくなるCQがある反面、応答したくなるCQがあるのも確かです。 このページでは、『CQ』について考えてみたいと思います。
50MHzの性格を理解する
50MHzはVHF帯に属しますので、基本は電離層で反射はせず見通し距離の交信となります。 しかしHFにも近い中途半端な周波数であるために、様々な条件で見通しを超える交信ができてしまいます。 50MHzで人気があるEスポによる交信は、条件がそろったときだけできる不安定なコンディションです。 スキャッターは一瞬だけ相手局が聞こえ、すぐに信号が消えてしまうこともあります。
QSBをともなって弱い信号が遠方より届くのもこの周波数の特徴で、これも信号の浮き沈みがあります。 このような条件で信号を送る技術、受信する技術が50MHzを楽しむ上でのポイントとなります。
基本的なCQの出し方
アマチュア無線の免許を取るとき、法規で以下の様に学びました。
CQ 3回以下
こちらは
自局の呼出符号 3回以下
どうぞ
これは不安定なコンデションであっても効果的に相手に伝えるCQの出し方で、ワッチしている局はすぐに応答ができる利点があると考えます。
時々長いCQを、1分以上出している局がいます。 CQを発見して応答しようとしてもなかなかCQが終わらず、嫌気がさして他の周波数に移ってしまったことはありませんか。 長いCQで応答する局を引き付けて、たくさん呼ばれようとしている意図があるのかも知れません。 しかし不安定なコンディションでは、あまりよいとは言えないCQの出し方です。 しかも長いCQが出し終わる前に、簡潔な交信ならば1交信できてしまいます。
PHONEによるCQ
私は、以下の様にCQを出しています。ほぼ法規通りです。 ※栃木県足利市で移動運用しているケース
CQ CQ CQ
こちらは
Juliet Kilo One Sierra Papa Quebec ポータブルOne
栃木県足利市 どうぞ
ご自分のコールサインで、この形式でCQを口に出し、時間を測ってみてください。 10秒前後で言い切れると思います。 1回のCQ後に5秒間ワッチを入れたしたとて、1分間に4回のCQが送信できます。 ということは応答する局に対しては、1分間に4回の応答するチャンスを提供することとなります。
10秒前後のCQならば、一息で送信できますので呼吸も楽です。 何度繰り返しても、呼吸が乱れることがありません。 人間を含めた通信システムでは、オペレータの自分にも余分な負荷を与えないほうが快適に運用できます。 そして何よりも、応答してくれる相手局がコールしやすいように、配慮することが必要だと考えます。
さらに短縮する
さらにCQを短縮化してみましょう。 ※栃木県足利市で移動運用しているケース
CQ CQ CQ
Juliet Kilo One Sierra Papa Quebec ポータブルOne
足利市 どうぞ
「こちらは」と県名を除いただけで、1秒以上は短縮できます。 大した時間ではないと思われるでしょうが、QSBを伴う弱い信号に対する応答には若干の効果があると考えます。 その若干の差が、ぎりぎりの交信に生きてきます。
CWによるCQ
私は以下の様にCQを出しています。普通ですね。 ※栃木県足利市で移動運用しているケース
CQ CQ CQ DE JK1SPQ/1 JCC15o2 K
これを1回のCQ後に5秒間ワッチして、呼ばれなければ次のCQを送信します。
送信の速度は、私は高速のCWについていけないのでゆっくり目です。 CWは基本的に相手局に合せるものですから、自分の許容速度でCQを送信し、相手局に合わせていただきます。 あまり遅すぎては応答してもらえないかも知れません。 それでも扱えない速度のCQを出して、コールされてパニックを起こすならば、自分のできる限りのスピードが正解だと思います。
なぜCQに市郡名をつけるのか
CQに対して応答するときに、特に弱い信号の場合はアンテナの向きを変えて、受信信号を少しでも強くします。 その時に運用する地名がわかると、応答する局としてはアンテナをどの方向に向ければいいか想定できます。
例として関東平野内で運用していると、0エリアの信号は新潟県の下越と長野県の飯田・伊那地方ではかなりの方向の差があります。 これはコールサインだけでは想定できる範囲を超えています。 この時運用地名が分かれば、北に向けるべきか西に向けるべきか判断できます。 ただし、これはグランドウェーブによる通信に限ることであり、Eスポなどの電離層による反射の場合は勝手が異なります。
CQに運用地を追加することは、応答局を引き付ける効果もあると考えます。 珍しい市郡や町村は、50MHzで盛んであるアワードを目指す局にとって重要な情報となります。 相手局に配慮した情報、欲しがる情報を加えることで、応答する局の量が変わりはずです。
余計な運用地情報を削除する
よく詳細な運用地情報をCQに追加する局がいますが、少々過剰である気がします。 特に弱い信号を受信する場合は、情報過多は応答の障害になります。 CQを出す目的によって微妙に変わる情報になりますが、交信の目的に合わせて考えていただきたいと思います。
私の場合は、細かい情報はCQでいいません。 QSOの中で、信号の強い局、その情報を求めていそうな局に伝えるようにしています。
コールサインを一発でとってもらえない不安
特に弱い信号では、一回のCQではコールサインが取り切れない場合はあります。 だから短いCQを繰り返し送り、ベストのタイミングで応答してもらいます。 応答してくれる局に対して、コールするチャンスをたくさん提供しましょう。
フォネティックコードは正しく
言いにくいという理由で、フォネティックコード以外の単語を使う局もいますが、否定はできないものの、応答する側は分かりにくいと思うことがあります。 特に弱い信号の場合、肝心な一文字が分からず、信号がフェードアウトしていったという経験が何度もあります。
JulietをJapanに置き換えるくらいは許容の範囲としても、Sierraを『すぅざん』とか『さんちゃご』といった単語に置き換えて、 しかも発音、滑舌が悪かったりすると、交信の可能性を下げてしまいます。
声の質を考える
今まで意識をしてきませんでしたが、加齢により滑舌の悪さを感じることがあります。 はっきりしないCQは、応答する気にならなくなる可能性があります。 これは先輩と言われる年齢に達した場合、気にしなければならないことと感じています。
女性のCQには、応答する局が増える傾向があります。 もちろん女性が少ない世界ですので、単純に女性とお話がしたいという想いもあるかも知れません。 しかしそれだけではなく、女性特有の高い発音が聞きやすいという一面もあるのではないかと考えます。
もしそうだと仮定できるとしたら、ここは普段話す音程から、無理のない少し高めの音程でCQを出すといかがでしょうか。 この点は詳しく検証をしていませんので、提案にとどめさせていただきます。
まとめ
CQは交信のきっかけであり、聞いている局に「交信したいな」と思ってもらえないと応答してもらえません フォネティックコードは意味があるから使うのであって、その意味をしっかり考えるべきだと考えます。
移動運用でCQを出すときには、応答する局や次の交信を待っている局の事をよく配慮して、「さばく」ことを念頭に置きましょう。 コンディションや状況をによって柔軟に対処できればたくさん呼ばれ、楽しい移動運用ができると思います。