応答の仕方

応答の仕方

移動運用でCQを出すと、たくさん呼ばれます。 もちろん運用地の選択ミスや、コンディションに恵まれず、誰にも呼ばれないということもありますが、たくさん交信することを目的とするのも移動運用です。 一斉に呼ばれるパイルアップは楽しいですが、それをうまくさばけないと、だんだんコールする局は減ってきます。 移動運用はたくさん呼ばれるように運用することがコツといえます。

このページでは、CQを出した後の応答に考えてみたいと思います。

グランドウェーブでの交信順序

パイルアップを受けた場合は、どの局から交信したほうがいいでしょうか。 信号の強い局から交信するというのは、ある意味正解です。 しかし、弱い信号でやっと呼んできた局に気付かず、コンディションの変化で見捨てることもあります。

この時間帯には、どのエリアが応答する可能性が考えながら応答することをお勧めします。 呼んでくる信号は、出力による強弱と伝搬による強弱があります。 遠方から山岳などの反射で届く信号と、直接届く信号は、聞こえ方が違います。 スキャッターの電波も異なります。 まずは遠方から送られてきた信号を優先してください。

「まとまって呼ばれるから、そんなのわからないよ」 ごもっともな意見です。 少しでも遠方とわかる部分、例えば『ポータブル1』的な運用地を示す情報を確認したら、迷わずエリアを指定します。 「3エリアの局長さん、もう一度コールください」などと丁寧に言っている場合ではありません。 コンディションが落ちる可能性もありますので、「3エリアもう一度」ときっぱりと確実に指定します。

さらに移動運用を繰り返すと、今いる運用地ではどのエリアが何時ごろ聞こえるという予測もできます。 その場合、間違ってもいいですから『このエリアだ』と思えるエリアをしてしてもいいと思います。

パイルアップになった場合、私の交信順序は以下の様にしています。
 ①遠方の局
 ②QRP局
 ③同エリアの弱い局
 ④同エリアの強い局

サフィックスだけで呼ぶ局がいますが、これはパイルアップをさばいていてペースが狂います。 無視してしまってもいいでしょう。

Eスポやスキャッター発生時の交信順序

Eスポでオープンしにくい地域は、頭に入っていますか。 その様な地域は、グランドウェーブによる交信も厳しい場合が多いです。 例えば栃木の南部で運用していると、3エリア西部、4エリア東部、5エリア東部、7エリア北部、8エリア南部が難しい地域です。

6月中旬ごろ数回、近距離Eスポが現れます。 短時間ですが、交信の難しい地域が簡単に交信できます。 このチャンスを逃すわけにはいきません。 スキャッターの時も同様です。 確実に難しい地域を優先して交信しましょう。

待機させない

時々、「ポータブル1の局、ご待機ください」と言っている局がいます。 これは正しくないパイルアップのさばき方で、待機させた局にとっても迷惑です。 その他の局は、さらに長い時間待たされますので、他の周波数に移ってしまいます。 50MHzの性質であるコンディションの変化に応じた交信を心掛けるとすると、待機させることは正しい方法といえません。

「ポータブル1」の局が呼んできたなと思ったら、頭の中に記憶させておき、次のCQまたはQRZで応答するべきです。 もちろん、さらに優先するべき局がいたら、そちらと交信を始めるべきです。

応答があったら

移動運用でCQを出すということは、たくさんの局と交信することを想定していると思います。 CQを出していて、あまり呼ばれないときは自由にコミュニケーションをはかってもいいと思います。 しかし、多くの局からコールを受けているときは、必ず交信を制御しましょう。

複数の局に呼ばれたなと思ったら、必ず簡潔な交信を心掛けるべきです。 だらだらと長い交信をしていると、コールした局は他の周波数へ移ってしまいます。 待っているかも知れない局への配慮が必要です。

私の場合は、以下の様な交信を基本としています。(赤色が自局)
CQ CQ CQ こちらは、Juliet、Kilo、One、Sierra、Papa、Quebec、ポータブルOne、栃木県足利市どうぞ。
Seven、Lima、Three、Golf、Quebec、Hotel。
Seven、Lima、Three、Golf、Quebec、Hotel、こんにちは。ファイブナインです。どうぞ。
了解。同じく59で、東京都三鷹市です。どうぞ。
了解。カードはビューローにお送りします。またお願いします。ありがとうございました。さようなら。
ありがとうございました。さようなら。

空振りのCQが続くときは、名前や運用地、設備、気候などの情報を送ってもいいと思います。 交信は、最初はラバースタンプ的に運用して経験を重ねますが、交信内容のボキャブラリーを増やすこともコミュニケーションとして必要なことです。 こういう内容の交信をしなさいというルールはありません。 しかし状況に応じた内容を送ることが正しい交信だと考えます。

聞きやすい声を意識する

SSBなどPHONEで運用していると、独特な抑揚で話す局がいます。 個人的には『浪曲』を聞いているような気分になります。 おもしろい表現ではありますが、50MHzでは不安定な要素がありますので、独特の抑揚は聞きにくいだけです。 ローカルQSOやHFでの安定した電離層反射の通信でしたら、おもしろい局として『浪曲おじさん』とかあだ名をつけられて有名になれるかも知れません。

女性の局がパイルアップでも浮き上がるのは、声の質ではないでしょうか。 特に若い女性だと活舌もいいですから、聞き取りやすいと思います。 では我々男性はどうすればいいか。 聞き取りやすい声を意識して、はっきり話すことで改善が図れるものと考えます。

普通に話す

住所をQTHと言ったり、名前をQRAと表現することは、Q符号が一般化していますので問題ありません。 PHONEによる国内QSOならば、『住所は』『運用地は』『名前は』と表現してもいいと思います。 基本は相手局に分かりやすくが原則です。 『キューティーヘンリー』とか『キューアールアメリカ』は変です。 やめたほうがいいと思います。

最近聞いて驚いたのは『チャーリーナンバー』や『ゴルフナンバー』。 誰が言い始めたのかわかりませんが、悪い見本ですのでやめましょう。 本人は格好いいと思っていても、周りは冷たい目で見ます。

『漢字解釈』。これもおかしな日本語です。 『漢字で書くと』が正しいです。 『ハッポウしてください』危ない、危ない。 「送信してください」のほうが分かりやすいです。

過剰な自己表現をし過ぎると、まじめな局は呼んでこなくなります。 オリジナルにこだわるのもいいですが、普通がいいと思います。

簡潔なCWによる交信

移動運用でのCWによる交信は、『5NN BK』で十分です。 GMなどのあいさつ位はするとして、たくさんの局と交信することをテーマに運用してください。

CWはSSB以上に遠くまで通じるモードです。 50MHz特有のコンディションの変化もありますので、まずは簡潔に交信してください。 短い交信であっても、気持ちは相手に十分伝わるのがCWだと思います。

QSOが終わったら

交信が終わったら、すぐに次の交信をしましょう。 次に交信しようと、待っている局がいます。 テンポよく交信を続けると、コールする局が集まる傾向があります。

『引き続きこの周波数をお借りします』と言っている局がいます。 コンディションの変化が激しい50MHzでは、誤ったオペレートと言えます。 しかも移動運用は電源が限られています。 無駄な送信を控えるべきです。 次の交信チャンスを待っている局がいるわけですから、すぐに次のCQもしくはQRZを送るのが正解です。

私は、交信が終わるとすぐに以下の様に送信します。
 こちらは Juliet、Kilo、One、Sierra、Papa、Quebec、ポータブルOne 足利市どうぞ。 交信が終わると同時にコールしてくる局を許すと、それに続く局が出てきて収拾がつかなくなることがあります。 その意味でも、交信後は次のCQもしくはQRZを送りましょう。

パイルアップが大きくなったときの対処

パイルアップが大きくなった時の対処も考える必要があります。 行列に並びたくなる心理が人間にはあるようで、パイルアップはさらなるパイルアップを生みます。 それが楽しくて、移動運用ではパイルアップを期待してしまうのかもしれません。

交信が終わったら、次のCQもしくはQRZを送るとパイルアップが膨れてきます。 よくない方法と思うのですが、交信終了後にコールサインを言わずに「次どうぞ」と送ります。 パイルアップに寄ってきたばかりの局は、コールサインを取り切れていませんから呼べません。 こんな方法で、呼ぶ局を制御することもできます。 ただし2、3局程度にとどめておかないと、「コールサインを言え~」とお叱りの声が聞こえてきます。

パイルアップを制御できないと、コールする局は減っていきます。 リストQSOなどをはじめてしまうと、50MHzでは『6mをわかってない局』と呆れられます。 ケースバイケースの対応が、パイルアップを楽しくさせます。

コールサインを取り切れていない局

CQを出しているこちらのコールサインを取り切れず呼んでくる局がいます。 しかも「コールが取り切れていません。コールを送ってください。」などと横柄なことを言いだす。 このような局はペースを乱す厄介者です。 無視してCQを出し、もう一度呼ばせるくらいの毅然とした態度が必要です。

何度も言いたくなりますが、必ずコールサインがとり切れてから呼ぶという基本を徹底してください。 「コールサインを取り切れてから呼べ」と怒っている局がいますが、気持ちはよくわかります。 怒るだけ無駄です。相手にせず、無視をしたほうが正しいと思います。

まとめ

通信とは『無駄を省いて、最大限のコミュニケーションを図る』ものです。 意味のない表現は笑いを誘っても、無駄なだけです。 フォネティックコードやQ符号などは、意味があるから使うのであって、意味なく使うのは正しくないと考えます。 特にPhoneによる交信は、通常の話言葉のほうがいいかも知れません。

移動運用に出かけてCQを出すときには、呼ぶ局や待っている局の事をよく配慮して、「さばく」ことを念頭に置きましょう。 交信の内容はケースバイケースです。 コンディションや状況をによって柔軟に対処し、楽しいコミュニケーションが取れると、移動運用がますます楽しくなると思います。