ログの工夫
時代に逆行するようですが、私は紙ログをお勧めしています。 理由は必要な情報が、自由に書き込めるからです。 紙ログは交信の記録だけにとどまらず、移動地のことやコンディション、起こったこと全て書き留めておきます。 後日見返すことにより、次回この運用地を利用するべきか、どう運用するべきか判断する材料となります。
電子ログが当たり前になった今、紙ログにスポットライトを当ててみたいと思います。
そもそもログは
そもそもログは、何のために記録するのでしょうか。 QSLカード発行だけのデータではありません。 業務日誌というくらいですから、無線業務の報告です。 いつ誰と交信したことを基本として、信号の特徴や経過するコンディションなどを記録します。 報告と書きましたが、報告する先は未来の自分です。
何年か後に同じ場所で移動運用するとします。 その時必要となる情報は何が欲しいでしょうか。 交信した局の名前ではありません。 運用地の情報と、どのようなエリアと交信できたが欲しくないですか。 ログにはそのような情報を記録します。
近頃の交信で、名前を重要とする傾向が強まっているように思えます。 『交信はレポートの交換で成立』という定義からすると、極端なことを言えば相手局の名前は重要な情報ではありません。 直接会うことがなければ相手の名前の記録は無駄となってしまいますが、交信時のコミュニケーションのための情報としてはメモしたい気持ちもあります。
多少無駄な情報が含まれたとしても、できる限り情報をログに書きこむということが正解ではないでしょうか。
電子ログはダメか
電子ログでデータベース化することは、QSLカードのプリンターによる印刷ができ、大量に交信したときの省力化になります。 またコンピュータシステムの得意とする検索や集計の機能に優れているメリットがあります。
よい部分はたくさんありますが、難点もあります。 コンテストの様に決まった項目を入力していく場合には、電子ログは有効です。 交信しながら、感じた情報を入力しようとすると、大変になると思います。 そもそもログの本質を考えると、ちょっと情報が限定的になり、さらに交信しながらの入力は忙しいものとなります。 書いた方が早いという人は紙ログの使用も選択肢です。
コンピュータシステムのメリットを考えて使う分には賛成です。 個人的には運用中は紙ログ、整理や集計には電子ログの併用が、両者の良いとこ取りでベストではないかと考えます。
お勧めはB5サイズのノート
B5サイズのノートはよく使われるサイズということもあり安く、どこでも購入できます。 サイズ的に邪魔にならず、交信情報の書き込みも十分できます。
メーカーのサイトを見ると、B5サイズのノートは以下のような商品があるようです。
A罫 30行
B罫 35行
C罫 42行
C罫は一般的でなく、売っているところを見たことがありません。
また5の倍数でないために、交信数が把握しにくい、罫線の間隔が狭くて運用時の殴り書きに向いていないという欠点もあります。
選択は好みとなりますが、私は1ページ35行のB罫を使います。 A罫は少し書き込める行数が少ないとう気分的な理由です。
基本的に書いておくこと
必ず書いておくことは、
相手局のコールサイン
交信日時
周波数とモード
JCCやJCGのために相手局の運用市郡
くらいです。
周波数は『50』とだけ書かず、『50.200』と細かく書いておいてください。 理由は、どの周波数でCQを出したら、どれだけ呼ばれたかを知る手がかりになります。 また、どの周波数でCQを出したら隣接周波数のノイズがひどかった、ビートをかけられたなど、妨害される意図を探ることができます。 そんなことを繰り返して経験することです、平和にCQを出せる周波数が見えてきます。
CQを出している局を呼ぶときも同じです。 アクティブ局は同じような周波数で運用することが多いです。 特に遠方の局でこの様な情報を持っていれば、かすかすの信号でも誰か判断する手がかりになります。
SOTAを頑張る方や山が好きな方なら、山の名前を書くと、次の移動計画に役立つと思います。 自分の目的に合わせて、ログは書くといいでしょう。
何でも書き込んでおく
残せる情報はなんでも書いておきます。 運用地でアンテナを上げた位置、簡単な地形、トイレ有無、訪問者、野生動物。 ノートには自由も書けます。数ページ運用地の情報で埋めてもいいと思います。
私は天気予報や日の出など、出発前にログに書いておきます。 標高や運用する山の情報なども書いておくといいと思います。 高速の料金なども、移動運用のコスト計算に役立ちます。 運用地の近くのコンビニやガソリンを売ってくれるスタンドの情報も大切な情報です。
ビートをかけられる。 移動運用を行うと、地元局だと思いますが長時間ビートをかける方がいます。 その時の情報を書いておくと、ビートをかけられても回避する対応が事前にシミュレーションできます。
コンディションの急変時。 コンディションが変わるときは、スピーカーから流れるノイズやコールする局が変化します。 ちょっと変化をメモしておくことで、同様の変化の対応がスムーズになります。
信号の強い局、厳しい信号の局はマークしておくと、のちにQSLカードが届き、アンテナや出力で納得することがあります。 この情報は、その運用地からだと、どのような設備の局なら交信できるか知る手掛かりになります。
絵や図を書いておく
得意ではない方もぜひ、運用地のイラストを書いておくと後日役に立ちます。 移動運用では、アンテナの上げる位置で電波の飛び方は変わります。 はじめて運用地ならば到着し、周囲を見渡してアンテナを上げる位置を決めると思います。 その位置を略図で書いておくと、次回はすぐにアンテナをあげられます。
アンテナを向ける位置など、写真でもいいのですがイラストなら解説付きで残せます。 『この形に松の木にアンテナを向ける』的に書いておくと良いと思います。掛かりになります。
さらに移動運用を楽しむ情報
移動運用では、運用を楽しむことが目的ですが、せっかく出かけたのですから、食事や観光を組み合わせて楽しむこともできます。 ログにメモとして、食べた食事や利用した温泉、見てきたものなど書いておくといいと思います。
移動運用を重ねて、ログが増えてくると、かなりの情報がログに詰まってきます。 移動運用を楽しむ上でも、このような情報の管理も有効なのではないでしょうか。
電子ログとの共存
シグナルレポートより名前を優先したり、何回目の交信などと履歴をつらつらと伝えてくる局が増えています。 おかしなことが増えたなと思っていましたが、どうやら国内シェアトップの電子ログの影響のようです。
電子ログは単なる記録に過ぎず、優先するべきことはコンディションに合せた情報の交換です。 電子ログの入力項目を満たすための情報要求や、表示された情報を伝えることは、ローカルQSOやパイルアップになっていないときに行いましょう。 QSLカードが来たとか来ないなどは、必要ならば電子メールで行うべきです。
入力の手間となりますが、紙ログに記載された情報をデータベース化するのは現代社会においては特別なことではありません。 データ化する項目は限られていますが、コンピュータの得意とする集計や検索の機能は上手く利用して欲しいと思います。
QSLカードは手書きにこだわる方も多いと思います。 私は悪筆なので無理ですが、字がきれいな方はうらやましいと思います。 紙ログの情報から交信を思い起こし、QSLカードのレポートを書くことができれば、すばらしいことだと思います。
アマチュア無線は、通信によるコミュニケ―ションを楽しむ趣味です。 電子ログの入力項目を埋めることや、電子ログの情報にコントロールされるものではありません。 たくさんの局とつながりを持つために、ログという情報をうまく生かすことが、正しいと思っています。