第3話 はじめてのDX  ~ クリスマスは南の島 ~


2000/09/10

過去のCQ誌を読み漁ると、2000年1月号に『DXCC難易度リスト』というものを見つけました。 どこのエンティティーが珍しのかわからない私にとってありがたいものです。 容易に交信なエンティティーは『難度C』となっており、50エンティティーあります。 難度Cのエンティティーだけでは、DXCCは申請できません。 ちょっと難しいとされる『難度B』は、100エンティティーありました。 そうならば難度Cの50エンティティーと難度Bの50エンティティーで、DXCCの申請ができるわけです。 なんだか、DXCCが近い存在に思えてきました。

リストをじっくり見ると、難度Cに『パキスタン』が入っています。 素人なりにそのエンティティーの政情や経済を考えると、そんなに運用している局がいるとは思えませんでした。 本当に簡単に甲信できるのか???。 疑問がふくれ始め、腰が引けはじめます。 難度Bとされている小笠原の方が、Eスポで簡単に交信できるような気がします。

さて、今日から真剣にDXと向き合います。 CQ誌はバックナンバーを含めて読み漁り、情報を仕入れたつもりです。 今日はどんな結果となるか楽しみです。 最大の不安は、自分の話す英語です。

TS-520Vのスイッチを入れました。 BANDスイッチが21MHzになっていたので、そのままワッチし始めました。 アンテナの向きはどこへ向けたらいいのでしょうか。 とりあえず太陽のある方向へ向けてみました。

21.15MHzからダイアルを回してバンド内をワッチすると、21.295MHzでパイルアップを発見しました。 しばらく聞いているとVK9XVという局だとわかりました。 たくさん呼ばれているようで交信は短く、「59QSL」でいいみたいです。 これはありがたい!これなら英語力もそれほど関係なさそうなので、コールしてみることにしました。

周波数をずらしてDRIVE,PLATE,LOADの各つまみを調整して送信準備完了。 国内の局がたくさん呼んでいます。 交信の順番が回ってくるかちょっと不安です。 一生懸命コールしても、他のJA局に負けてしまいます。 10Wの非力さを感じながら、めげずにしばらく呼び続けると、ようやく交信することができました。 緊張がぷつーんと切れ、どっと疲れが出ました。

ところで、VK9Xってどこでしょう? クリスマス島という名前と、どこにある島なのかが地図で調べて初めてわかりました。 DXをはじめなければ、一生この島の存在はわからなかったかもしれません。 私の声が赤道を越えました。

『DXCC難易度リスト』を見ると、なんと難度Aではないですか。 説明書きには「常駐局がいるものの地域的にむずかしく、QSLカードの回収がむずかしい」と書かれいます。 交信まで30分ほど呼びつづけたのですが、あっさり難度Aのエンティティと交信できてしまい、多少慢心も出てきました。 ぜひともQSLカードを手にしたいものです。

この喜びは、家族には通じません。 一番素直に受け止めてくれる幼稚園児の娘に交信したことを話ました。
  私:「パパねぇ、さっきクリスマス島っていう島の人とCQでお話ししたんだよ。」
  娘:「え、サンタさんとお話したの?あのネ、クリスマスにシルバニアファミリーの・・・が欲しいの~」
  (注)我が家の子供たちは、アマチュア無線のことをCQと呼びます。
結局、家族には分かってもらえませんでした。寂しいものです。

その後、28MHzをワッチするとニューカレドニアの局を発見しました。 ニューカレドニアは50MHzでCQを出しているときに呼ばれたことがあります。 日本の局を呼ぶくらいですから、それほど珍しいエンティティーじゃないのでしょうか。 コールをすると、あっさり交信することができました。

サイパンやパラオで運用する日本人と交信ができました。 日本語での交信なので、気軽にコールすることができます。 海外で運用できたら、楽しいでしょうね。うらやましく思いました。

夕方はHFのハイバンドで、ヨーロッパ方面が入感するとCQ誌に書いてありました。 そのとおりアンテナをヨーロッパ方面に向けます。 ヨーロッパ方面に山が迫っており、あまり期待できないかも知れません。 Worked All Europe DX Contestで、ヨーロッパの局がよく聞こえました。 全てがはじめて交信するエンティティーなので、聞こえる局は次々とコールしました。 鼻息荒く、興奮はピークに達します。

自分の声がヨーロッパまで飛んでいると考えると、感激するものがあります。 地形的にヨーロッパとの交信は無理かなと思っていましたが、問題なくできたことに安心しました。 これから常置場所でDXを楽しむことができそうです。

DX1日目としては、楽しい趣味の時間を過ごせることができました。 特に英語で長い会話をしたわけではなく、ほっとしました。 結局は悩んでいるより、トライした方がよいことがわかりました。 これから下手なオペレーションと英語力で、ますます全世界に恥をさらすかも知れません。 しかし恥を恐れていては、この世界に入ることができないと思います。 途中で目標を放棄しないよう、頑張っていきたいと思います。

18時を過ぎると、子供がご飯の時間を知らせにきました。 リグのスイッチを切り、楽しかった趣味の時間は終了です。