どこに移動するか  ~ 適当に移動運用すればいいってものではありません ~

金曜日の午後になると、そわそわしてきます。 「天気はどうかなぁ」「コンディションはどうかなぁ」と週末の移動運用が待ち遠しくなります。 天気やコンディションは選べませんが、移動運用にはしっかり選ばなければならないことがあります。 運用する場所です。 楽しむためにも、しっかりと考えて移動運用に出かけましょう。

栃木の傾向

都道府県ごとに事情が違ってくると思いますが、ここでは栃木を例として運用地の選び方を紹介します。

地形的なこと
栃木県の標高は、2,500mを越す高山から渡良瀬遊水池のような低地まで高低差があります。 北は限りなく7エリアに近い場所から南関東に隣接する南部まで、幅広く移動地を選ぶことができます。 50MHzは、多彩なコンディションを楽しむことができますので、交信したい地域や季節により移動地を選ばなければなりません。

グランドウェーブでの交信
栃木県は宇都宮市付近で東西と南北に4等分すると、グランドウェーブによる交信の大まかな傾向が見えてきます。 北部の高山は別格で、たいへん電波はよく飛びます。 北方面とグランドウェーブで交信するならば、北東部がベストでしょう。続いて南東部が有利です。 7エリアとの交信を狙うときは、電波が国道4号線を南下してくるようなイメージで移動地を選びます。
西方面とグランドウェーブで交信するならば、南東部がベスト。続いて南西部が有利です。 北部は日光の山が障害となりますので、よい移動地は限られています。 1エリアに強力な電波を送り込む場合は、ちょっと小高いところで十分交信が楽しめます。

Eスポやスキャッターでの交信
様々な要因で交信できる地域が変わりますが、北部は7エリア的、南部は1エリア的に入感する地域が異なります。 例えば、北部では8エリアのEスポは頻度が低く、南部でも南関東のローパワーの局に呼び負けます。 有利・不利な地域はありますが、Eスポやスキャッター狙いの場合は、360度開けた南部の田園地帯に移動する方が間違えがないと思います。

[追記]
自分が運用する都道府県から相性の悪いポイントを早いうちに見極め、移動情報などのチャンスを逃さないようにするべきだと思います。 私の場合、Eスポで交信できる頻度が低く、グランドウェーブによる交信が厳しい市を多数残してしまいました。 残った市のラスト10を思い出すと、どうしても偶然に交信できない市ばかりです。

平地の移動運用

平地の移動運用では、土手の上をよく利用しました。 周辺より少し高くなっていることから、電波の打ち上げ角が多少低くなります。 このような地形的なメリットを有効利用するべきです。

土手は自動車が一台通れるスペースしかありませんが、車が数台止められるスペースがあります。 土手を走り回る自動車はあまりいませんが、通行の妨げにならない場所での運用は、安心して楽しむことができます。

地方の平地では、住宅地では考えられない事態が発生します。 栃木では季節によってハエの集団の襲撃を受け、運用どころではなくなることもあります。 また、さわやかな風に乗って牛などの家畜の香りが漂い、運用の妨げとなる場合もあります。 デメリットはありますが、広々とした場所で運用ができ、開放的で好きです。

[追記]
4エレのHB9CVに4mのポール、FT-690mkⅡを使用していた頃は、平地だと思うように楽しむことができませんでした。 理由として、アンテナの高さが低いために打ち上げ角が高くなってしまう。 やはりグランドウェーブという減衰しながら飛んでいく伝搬では、10Wでは非力ということだと思います。
後に6エレのHB9CVに10mのポール、TS-60Sに変えたところ、今まで聞こえなかった地域が驚くような強さで入感しました。 平地は自動車で行けるので、発電機などを使うと安定して50Wの出力が可能になり楽しめます。 楽しむためには、それなりのの設備が必要なのかもしれません。

低山の担ぎ上げ

栃木県内の南部は、低いながらも全方向開けて見晴らしのいい山がたくさんあります。 麓の駐車スペースから数十分の無線機材を担ぎ上げるだけで、平地と比べものにならないロケーションを手に入れることができます。 山登りの性格上軽装となるため、平地の移動運用に比べると非力になりますが、ロケーションが補ってくれます。

季節によっては、ハイキングを楽しむ方が山頂にたくさんいることもあります。 そのような場合はひと声かけて、なるべく撮影ポイントを外してアンテナを上げます。 間違っても山頂の標識などに、アンテナを添わせてあげるのは避けたほうがいいです。 そして必ず無線についての質問を受けますので、しっかりコミュニケーションをとれば問題なく山頂でも運用できます。

[追記]
たった10分の担ぎ上げでも、装備の軽量化は考えるべきです。 その昔、コンテストにフル参加するために38Ahのバッテリーを5個も山頂まで運んだことがあります。 楽しんだ後の片付けは、地獄のようでした。

林道の駐車スペース

林道には、自動車が数台駐車できるスペースがあります。 駐車スペースを利用して、平地同様の装備で移動運用を楽しむことができます。 林道の最高地点は切通しになっている場合が多く、全方向に開けているポイントは少ないです。 交信したい方向にあわせて、林道の移動運用場所を選択するといいでしょう。

林道で目につくのがごみごみ。 大型家電から自動車まで捨ててあります。 マネキンの首が落ちていたときは、びっくりしました。 また子犬や子猫が捨てられていたときは、どうしていいか困ってしまったこともありました。

林道での運用は、何をしているかはっきりさせる工夫が必要です。 地元の方から不法投棄をしていると勘違いされ、パトカーが来たことがありました。 アマチュア無線を楽しんでいるという証拠として免許証や免許状を持参していますが、たいていは説明するだけで納得してもらっています。

[追記]
2001年のリサイクル法の施行されてから、ますます粗大ゴミの不法投棄が目立っています。 林道の駐車スペースが投棄場所になり、閉鎖されてしまった場所があります。 また「用を足す人」も多く、ティッシュペーパーなどの散乱も見苦しいです。 最低限、人目につかないよう処理をしてほしいと思います。

観光地の駐車場

栃木県には、観光名所がたくさんあります。 観光名所の中には見晴らしのいい場所があり、いい移動運用場所となります。 気持ちよく運用していると観光バスが止まり、バスから降りてきた団体旅行の方々より強烈な質問攻めにあいます。 もし、その様な事態となった場合は、ていねいに説明をしましょう。

そんな観光地であっても、早朝や夕方、オフシーズンは人影もまばらです。 できる限り観光客の少ない時間帯や季節をねらって移動運用すれば、観光客の質問攻めにあうこともなくなります。

[追記]
ある観光地の市営駐車場には、隣接する食堂やおみやげを販売する店舗があります。 その駐車場で長時間運用していたら、店主にクレームをつけられたという話を聞いたことがありました。 観光シーズンに長時間居座れたら迷惑ということだと思いますが、周辺には配慮を忘れないほうがいいと思います。

高山の担ぎ上げ

1999年、日光市の温泉ヶ岳に単独で担ぎ上げをしました。 下山中に足を滑らせ、けがをしまいました。 10m程ですが滑落した恐怖は、思い出すとぞっとします。 それ以来、高山の移動運用は行っていません。 山をなめてはいけないことがよくわかりました。